研究概要 |
本研究室ではこれまでに、ポリビニルピロリドン(PVP)を金属塩水溶液に加えると,成膜性に優れたコーティング液となることを明らかにしてきた。本研究では,ZrO_2薄膜を対象として,PVPを添加した水溶液から作製される前駆体膜がセラミック薄膜に変換される過程を明らかにすることを目的とし,種々の温度で焼成した膜について種々の評価を行なった。 ZrCl_2Oを水に溶かし,粘度平均分子量630000のPVPを溶解させ,コーティング液とした。ただし,溶液組成をモル比ZrCl_2O:PVP:H_2O=1:1:265とした。(PVPに対するモル比はモノマー換算値である。)デイップコーティングによってSi(100)基板に前駆体膜を作製し,100℃、続いて200〜900℃の種々の温度で熱処理した。膜厚は100℃から900℃までの昇温過程で約0.5μmから0.1μmに減少した。X線回折測定の結果,500℃で結晶化がおこることがわかった。また、エポキシ樹脂製接着剤により膜表面に接着したステンレス製の丸棒(直径12mm)を鉛直方向に引っ張り,膜が剥離するかどうかで膜と基板の密着性を評価したところ、100°〜300℃で熱処理した膜では剥離が見られたが,400℃以上で熱処理した膜は剥離せず,PVPが燃焼すると密着性が向上することがわかった。一方,膜の鉛筆硬度は,400℃で熱処理したときに最高(9H以上)となり,500℃で熱処理すると約2Hまで減少した。
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