研究概要 |
航空機、宇宙往還機、自動車等の部品に用いられている繊維強化複合材料の強化素材である繊維の破壊靱性については、これまで、非晶質繊維についてのみ、破面に現れるミラーゾーンの大きさを基に、経験的に評価する手法が開発されている。しかし、複合材料中で負荷応力の大半を担う繊維の破壊靱性値は安全・信頼性の強化・設計に不可欠であり、非晶質・結晶質を問わず、細径繊維の破壊靱性を評価できる普遍的方法の開発は急務である。本研究では、集束イオンビームで鋭い人工ノッチを導入し、有限要素法応力解析と組み合わせて数ミクロン径の細径繊維の破壊靱性を評価する方法を開発することを目的として、実験と解析を行った。初年度の研究で,収束イオンビームで繊維の破壊靱性を評価するために必要な極めて鋭い人工ノッチを導入するための最適条件をほぼ明らかにし、これまで直接的の求めることができなかった結晶質炭化珪素繊維の破壊靱性を求めた。本年度は、炭化珪素繊維で強化した複合材料は高温で使用されることから、非晶質炭化珪素繊維が高温に暴露された場合の破壊靱性の変化を調べることを目的として、初年度に開発した手法を用いて実験と解析を行い、(1)非晶質炭化珪素繊維中の微細結晶の粗大化に従って破壊靱性は低下すること、(2)1773K暴露繊維の破壊靱性値は1673K暴露繊維のそれに比して60%になること、(3)1773Kの大気暴露では酸化膜の破壊で形成されたクラックが、破壊靱性の低下した繊維に進展するため、強度低下が生じること、などを定量的に示すことができた。
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