研究概要 |
本研究では、20カラット以上のAuを含む超弾性合金を創製するため、Au-Cu-Al合金をベースとし、マルテンサイト変態温度、形状記憶特性、超弾性特性を評価し、以下の知見を得た。 1.マルテンサイト変態温度 Au-18.5wt.%Cu-4.5wt.%A1合金において、β単相域(700℃)から水焼入れすることにより、典型的な熱弾性型マルテンサイト組織が得られた。上記Au-Cu-Al合金は、母相の規則度が極めて高く、室温にて加工することは極めて困難である。そこで、本研究では、Al濃度を低下させ、母相の規則度を低下させ延性を改善する目的で、Mnを添加したAu-15wt,%Cu-3wt.%Al-2wt.%Mn合金を作製した。本合金のβ単相化温度は3元系合金よりも低くなり、500℃からの焼入れにより、β相を室温まで凍結でき、また本合金のマルテンサイト温度は、M_s=0.7℃、M_f=-5℃、A_s=6℃およびA_f=11℃であることが分かった。(M_s, M_f:正変態開始・終了温度、A_s, A_f:逆変態開始・終了温度) 2.形状記憶特性 本研究にて作製したAu-Cu-Al-Mn合金は、β(bcc)+α(fcc)2相組織にすることが可能であり、延性に優れるため、通常の冷間圧延・焼鈍工程により厚さ0.2mmの薄板を作製することが可能であった。厚さ0.2mm板を用い、簡易的な形状記憶効果を評価したところ、表面歪み1%の曲げ歪みに対して90%以上の形状回復を示すことが分かった。また、90%以上の形状回復を示す合金は、19.2カラットAuを含む。 3.超弾性特性 最終熱処理により完全にβ単相化した試料は、粒界が脆く、引張ジグに挟むことにより破壊が生じてしまった。そこで、本研究では、粒界に優先的に延性に富むα相を析出させ、粒界破壊を防ぐと共に超弾性特性の発現を試みた。室温にての引張サイクル試験を行った所、形状回復は完全ではないが、約1%の超弾性歪みが確認された。α相分率、α相を粒界へ優先的に析出させるための最適熱処理を確立することにより更なる超弾性歪みの向上が期待できる。
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