研究課題/領域番号 |
18656202
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水林 博 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (40114136)
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研究分担者 |
谷本 久典 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (70222122)
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キーワード | 金属配線 / 銅薄膜 / Taキャップ効果 / バッファー層 / 弾性特性 / X線回折 |
研究概要 |
先進電子機器の配線幅あるいは薄膜厚はナノメートル域に入っている。最近、Ta/Cu/Ta薄膜(Taキャップ層/Cu層/Taバリヤ層)について、Taキャップ層を積層すると、すでに積層されている結晶質Cu層/Taバリヤ層の性質が変化する様に見える新現象が見出された。本現象は、互いに固溶しない金属多層膜にキャップ層を後付けすることによるものであり、ナノスケールでの特異的あるいは普遍的な現象であるといえ、電子配線や薄膜の観点から重大である。この新現象に係る実験を進め、以下の結果を得た。Cu薄膜の弾性率(ヤング率)の膜厚保依存性は、Cu/Taの場合、膜厚が1000nmから10nmの範囲で内部応力の効果を補正したバルクCuの値とよい一致を示すが、Ta/Cu/TaではCu膜厚〜80nm以下で大きな低下を示す。ナノ結晶Cu薄膜の内部摩擦は、主として結晶粒界層での擬弾性を反映しており、その値はCu/TaとTa/Cu/Taでほとんど同じであった。膜厚方向の平均結晶粒径はCu/TaとTa/Cu/Taでほとんど同じであるが、膜面方向の平均結晶粒径はTa/Cu/Taの方が大きく、Taキャップにより結晶成長したことを示唆する。また、エレクトロマイグレーション(EM)実験で得られる活性化エネルギーはCu/TaとTa/Cu/Taで共に約0.3eVであり、この値はバルクCuでの粒界拡散の活性化エネルギーと比べて1/4程度の低さである。以上の結果を総合すると、ナノ結晶薄膜に特有な結晶粒界層の性質はTaキャップにより変化しないが、ナノ結晶の性質がTaキャップにより変化していると言え、これらの実験結果は論文として公表した。また、X線回折実験では、TaキャップによりCu膜厚〜80nm以下でのCuからのX線回折強度が大きく低下することが観測され、現在追求中である。関連研究として、ナノ結晶並びに非晶質合金について実験研究を進めた。
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