研究概要 |
DNA固定用の分析チップ用のDLCをナノパルスプラズマで合成し,以下の結果を得た. 1.大気圧プラズマCVD用の静電誘導サイリスタ(Si-Thy)の開発 現有のSi-Thyを改造し,印加電圧の半価幅を申請時の180nsから90nsまで短くした.そして,パルスの繰り返し数を,現在の1kHz固定から,100〜2kHzに変化させることができるようにした. 2.大気圧下でのナノパルスプラズマ発生実験 作製したSi-Thyを用いて,1/7気圧から大気圧下でのプラズマ発生実験を行った.原料ガスとして,気相中で重合しにくいメタン(CH_4)を用い,これをHeで希釈して,Heのペニング効果により炭化水素イオンの密度を上昇させることを試みた,CH_4とHeの各流量及び流量比を変化させながら,Si-Thyの電圧を2〜5kVの間で変化させ,さらに電極・基材間の距離を1〜10mmの間で変化させて安定な放電が得られる条件を明らかにした.特に電極・基材間の距離が重要であり,1〜2mmが適切であった. 3.大気圧下でのナノパルスプラズマCVDによるDLC膜の合成実験 上述の2.で得られたプラズマを用いて,準大気圧下及び大気圧下でのDLC膜合成実験を行った.安定したプラズマの発生する合成条件の範囲内で膜を合成し,合成条件が膜の特性にどのような影響を及ぼすかを明らかにした.その結果,適切な合成条件で作製したDLC膜は,sp3/sp2+sp3比が30%程度,水素量が35atm.%程度で,硬さは20GPa程度であることが明らかになった.また,静的水滴接触角は約75°であった. 4.DNA固定のためのDLC膜の表面官能基修飾 大気圧下で合成されたDLC膜の表面に官能基を修飾した.この際,CNTのアミノ基修飾の技術を利用して,まず硫酸・硝酸を用いて100℃程度でカルボキシル基修飾を行い,その後アミノ基を修飾するプロセスを用いた.さらに次年度の予定であったDNAの固定を試験的に行って,固定密度がDLCの表面処理温度と処理時間によって基板表面の状態とDNA密度がどのように変化するのかを,新たに購入したレーザ顕微鏡による分析ソフト,蛍光顕微鏡により観察した.
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