研究概要 |
プロセス工学の最新の研究成果が集積していると考えられる,化学工学会の学術集会である秋季大会の講演要旨集(1999年度,2001年度,2003年度)に対して文書クラスタリングを適用した。TF-IDF法に基づいてクラスタ名とその代表語句を抽出し,類似度の高いものから順に31種類のクラスタを,この期間におけるプロセス工学の,最小単位の研究コミュニティとした。化学工学に関する研究者及び技術者の専門分野は主に基盤技術分野(6分野)と展開技術分野(7分野)に大別される。13分野それぞれを代表する分野主要語を選定し,31種の各クラスタに含まれる文書における,分野主要語の出現総数を求めた。さらに各分野におけるクラスタごとの分野主要語の出現総数を媒介にしたコレスポンデンス分析を行い,各クラスタと各分野との相対的位置から,基盤技術分野と展開技術分野における各クラスタの相互相関,クラスタを介した各分野間の対応関係,年次ごとの各分野の推移を可視化した。 解析結果から13分野は8つの領域(「システム・情報・シミュレーション」・「安全」,「環境」・「エネルギー」,「熱プロセス」,「基礎物性」,「エレクトロニクス」・「超臨界流体」・「反応工学」・「材料・界面」,「バイオ」,「分離プロセス」,「粒子・流体プロセス」)から形成されていること,「ナノ・テクノロジー」のような新たな研究プロジェクトを構成する概念と,既存の研究コミュニティとの相対的位置づけを可視化できること,これまで研究者の勘と経験に基づいていた研究プロジェクトチームの構成を,各研究コミュニティの立ち位置から示唆しうることが明らかになった。しかしながら,萌芽的研究領域については,概念を特定できる語句が少ないことや用語のバラツキが大きいため,より的確な語彙抽出を行う必要がある。
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