研究課題/領域番号 |
18656232
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 孝一 京都大学, 工学研究科, 教授 (40111942)
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研究分担者 |
河瀬 元明 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60231271)
中川 浩行 京都大学, 環境保全センター, 助教授 (40263115)
蘆田 隆一 京都大学, 工学研究科, 助手 (80402965)
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キーワード | 新規反応場 / ナノリアクター |
研究概要 |
本研究では、ナノ空間を一種のリアクターとして利用することでバルクでは生成できない新規な構造の炭素の創成を試みた。ナノ空間として多孔体の細孔を、炭素源として揮発性の有機物を使用した。有機物は吸着により多孔体の細孔内に導入し、細孔に吸着した状態で有機物の熱分解を実施するが、多孔体の細孔はバルクに通じているため、常圧下での低速加熱では、揮発性の有機物はほとんどが反応を起こす前に細孔外へ揮発してしまう。そこで、反応を細孔内で完結させるために高圧下で迅速に熱分解することが有効と考え、圧力、昇温速度が生成炭素収率に及ぼす影響を詳細に検討した。また、生成した炭素のキャラクタリゼーションを実施した。 多孔体には活性炭、メソポーラスカーボン、及び活性アルミナを、有機物としてアントラセン(Ant)及びフェノール(Ph)を使用した。Antは多孔体に170℃で気相吸着、Phは室温で8.5wt%のPh水溶液中で液相吸着させた。熱分解には、加圧型キューリーポイントパイロライザー、フリーフォールリアクター、熱天秤を用い、それぞれ3000K/s、60K/s、0.16K/sで1040℃まで加熱した。 Antを常圧でゆっくり昇温(0.16K/s)加熱した場合の炭素収率はほぼ0であったのに対して、細孔中、3000K/s、2.1MPaの条件下では0.89にも達した。また、生成炭素のTEM観察から、バルクの熱分解でAntからわずかに生成した炭素は、1μm程度の球形炭素であったのに対し、ナノ空間で生成した炭素は大きさ1〜3nmで2、3層のグラフェンシートよりなる構造の炭素であり、バルクで生成する炭素とは大きさも構造も大きく異なることが分かった。これよりナノ空間を反応場として利用することで、その空間に制約を受けた大きさの、特異な構造の炭素を生成できることが明らかとなった。
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