本研究では、ディーゼル排ガス中に存在する有害なパティキュレート(PM)量を直接的に測定できる新規のPMセンサとして、排ガス中でセンサ素子にPMを捕集し、その燃焼熱によるセンサ素子の温度上昇からPM濃度を測定する『接触燃焼式PMセンサ』の開発を目的とした。そのための基礎的検討として、PM捕集能とPM燃焼性能を併せ持つセンサ素子の作製と熱起電力測定によるセンサ素子の温度上昇の直接測定について検討した。 センサ素子はPMをトラップするための多孔体と燃焼を促進する触媒の組み合わせが不可欠であり、成形性と機械的強度等の観点から、天草陶土を基材としたセラミックス多孔質体にディップコート法によりAg触媒を担持したものが適していた。Ag担持セラミックス多孔質体素子(センサ素子、S)、およびセラミックス多孔質体素子(参照素子、R)を熱電対とともに反応管に設置し、500℃に加熱しながらディーゼルエンジン排ガスを流通させた。ディーゼルエンジンの負荷を変化させ、エンジンのON、OFFに伴うS、R素子の熱起電力を熱電対により測定し、その差(S-R)をPM燃焼に由来するセンサ信号とした。センサ素子がPMを酸化できる温度(TPM)に保持する定温作動型PMセンサ、PM中のススは酸化できないが可溶性有機成分(SOF)は酸化できる温度に保持し、一定時間毎にTPMに加熱する温度パルス駆動型センサによるススとSOFの分離センシングの可能性を示すことに成功した。独自の発想に基づくPMセンサを提案し、2つのモードの新しいセンサの可能性を提示でき、萌芽研究の主旨に合致した成果が得られた。
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