研究概要 |
本研究ではこれまで余り真剣に考えられて来なかった光の圧力を用いるロケットエンジンの研究を行う。初歩的ではあるが、電源からエネルギーを準黒体輻射源に供給し、光束の形で運動量を放出させ、その推力を計測することから始める。 初年度は準黒体輻射源としてタングステンフィラメントを用いた。エンジン内部のノズルで光を反射し平行光に近づけるいわゆるWinstonミラー(放物面の一部)を採用、その焦点位置にタングステンフィラメントを固定する6フィラメントは最高2,5001(までとし、蒸発量を抑制した。試算では安全率10,000倍で約1,000時間の動作が可能。推力計測は申請者等が独自に開発した微小推力測定用の「ねじり式推力スタンド」で行った。本実験では、ワイヤーでバランスしてアームの一方に金属箔を光圧力を受ける形で吊るし、ワイヤーのねじり復元力と釣り合う際のねじり回転変位をレーザー変位計によって計測できるように構成した。推力のキャリブレーションはこれも申請者等が独自に開発した帯電による金属箔の反発力を利用した方法で既知の微弱静電気の力を発生して行った。 その結果、「ねじり式推力スタンド」は十分な分解能である0.1μNの測定精度を持つことが分かったが、タングステンフィラメントから発生する輻射熱の影響があってゼロ点ドリフトが問題となった。この問題は次年度において新たにシャッター開閉機構を有した計測系(熱の影響が出る前に短時間で推力測定を完了する)を構築することで解決する。今回得られた推力は300Wで025μNであるためパワー変換効率としては25%程度が期待される。 一方、別の提案として、タングステンフィラメントの替わりに、ガラス容器内のアーク放電によるプラズマ源を強い光源として実験を行う予定であったが、プラズマ閉じ込めの目途が立たなかったため、引き続き次年度の設計課題となる。
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