現代のプラズマX線分光学に求められている性能はエネルギー分解能のみならず時間、空間分解能が同時に両立することであり、更に絶対強度測定が可能で広いエネルギー範囲で高い量子効率が確保できることである。特に、絶対強度測定については1光子検出ができることが望ましい。また測定条件としては高温プラズマ発生装置の近傍で使用できることであり、電磁、音響ノイズ及び磁場に曝されながら人の出入りも全くできない状況で長時間安定していなければならない。しかし現行検出器による1光子検出の場合、入射光子のエネルギーが極端に大きくない限り受光素子の冷却を行って有限温度によるノイズを抑える必要があり、検出器に冷却用機器を付帯する必要がある。従って、ノイズ対策が大規模化する上、継続して長時間の測定を行えば冷却機器の保守或いは調整が必要となる。 本研究の目的は、高温プラズマ発生装置の近傍で長時間にわたって安定性を確保しつつプラズマX線分光に必要な性能が得られる新しい動作原理を検証することである。初年度は特に検出期の安定性に着目し、常温環境で動作して電磁、音響ノイズの影響を受けにくいX線スペクトル測定の可能性について検証実験を行った。 実験に用いた金属材料はアルミニウムであり、大型ヘリカル装置の高温プラズマから放射されるX線スペクトルを実際に測定することに成功した。測定したX線のエネルギー領域が20keV以上であったことから光源強度がもともと弱く時間分解能について評価するに至らなかったものの電磁、音響ノイズ対策は特に行わずにエネルギー分解能と空間分解能の両立を確認することができた。
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