真空中で棒状のβ"アルミナ固体電解質(BASE)の一端を200℃程度の液体ナトリウムに浸し、他端に多孔質電極膜を取り付けて600℃程度に加熱すると、電極-ナトリウム間に起電力が発生し電流を取出すことができる。本研究はこのような新しいタイプの熱電変換の特質を明らかにしつつ高性能化のための方策を探り、実用化の可能性を検討するものである。 今回なるべく大きな電流を取出せるよう、β"アルミナの長さを短くし、さらに複数本束ねて内部抵抗の低減を図ったセルを作成して発電実験を行い、その発電特性について検討した。実験には断面2.6mmx4.5mm、長さ65mmのβ"アルミナを6本結束して用いた。下部を液体ナトリウムに浸しておき、スパッタ法でモリブデン電極を取付けた上部をヒーターで加熱して起電力や電流-電圧特性を測定した。起電力は従来型のAMTEC(アルカリ金属熱電変換)とほぼ同等で、電流は120mA程度が得られた。この電流値はβ"アルミナのイオン導電率から推定される値とほぼ一致していた。低温端の温度を高めに設定すると起電力は低下するもののイオン導電率の面で有利となり、より大きな出力が期待できることが分かった。ナトリウムの温度による蒸気圧変化を起電力に変換するAMTECと、セル内に圧力差が存在しない本研究のセルで同様の起電力が得られることは興味深い。この実験結果は平成19年電気学会全国大会にて報告した。 電解質の導電率を高めることが高出力化に必須であることは明らかなので、溶融塩などを組み合わせた形のセルの実験を行うべく現在準備を進めつつある。
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