研究概要 |
真空中でβ"アルミナ固体電解質(BASE)の一端を200℃程度の液体ナトリウムに侵し、他端に多孔質電極膜を取付けて600で程度に加熱すると、電極-ナトリウム間に起電力が発生し電流を取出すことができる。本研究の目的は、このような熱雷変換セルの可能性と問題点を実際にセルを作製し発電実験を行うことによって明らかにすることである。今回、長さ80mmのβ"アルミナを用いて外部加熱型の小型発電セルを試作して発電実験を行い、その発電特性について調べた。外部からの加熱温度が649,700°Cの時、開回路電圧はそれぞれ0.37,0.415Vとなったが、温度と起電力の関係式より実際の電極温度は外部加熱温度より80℃前後低くなっていると推定された。また、電流一電圧特性の測定より、セルの内部抵抗は固体電解質のイオン導電率に見合うものであることなどが分かった。セル内部の低温部にナトリウムが凝縮しやすく、電流取出しリードとケースの間で絶縁を保つ工夫が必要なことなども含め、発電セル設計のために必要な基礎的知見が得られた。一方、低温部の温度を高めに設定しセル内のナトリウム蒸気圧を上げると、外部からの電圧印加により発電とは逆方向の電流を流せることも今回の実験で明らかとなった。このセルをヒートポンプとしても作動させられる可能性を示すものとして興味深い結果である。これらの結果の一部は平成20年電気学会全国大会にて発表した。 固体電解質に溶融塩を組み合わせてイオン導電率を高めることでセル出力を向上させる試みとして、β″アルミナ管に溶融したNaOHなどを充填して抵抗を測定したところ、抵抗値を1/20ないし1/40に低減できることがわかった。腐食性などの問題点もあるが、高出力化実現への期待を持てる結果である。
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