真空中でβ"アルミナ固体電解質(BASE)の一端を200℃程度の液体ナトリウムに浸し、他端に多孔質電極膜を取付けて600℃程度に加熱すると、電極-ナトリウム間に起電力が発生し電流を取出すことができる。しかし固体電解質のイオン導電率が小さいため内部抵抗が高くわずかな電流しか得られない。そこでイオン導電性の大きい溶融塩を固体電解質と組み合わせることでセルの内部抵抗を低減し、より大きな電流が得られるよう改善を試みた。 溶融塩には低温でも溶融する混合塩(NaOH+NaI)を選び、これを充填した袋管状のBASE管を用いてセルを作成した。ヒーターで電極部を300℃以上に加熱したところ、BASEのみの場合と同様な安定した起電力が得られるようになり、連続的に電流を通じることができた。セルの内部抵抗は混合塩の融点(約240℃)以上の温度で大きく減少し、BASEのみの時に比べ約1/3に低下するなど溶融塩の有効性は確認できた。一方で溶融塩がBASEを徐々に腐食することや、電極部付近まで溶融塩を充填すると高温のため蒸発しやすいなどの問題点も明らかになった。二の点け溶融塩の種類の選択、セル構造の改善等によって解決可能であると考えられる。たとえばBASE管内に温度域によって区切りを設け、それぞれに適した組成の溶融塩を導入するなどの方法である。 本研究のような熱電変換セルをナトリウムとβ"アルミナ固体電解質以外の組み合わせで作成することは理論的には可能である。しかし他の作動媒体では適当な固体電解質が得られない場合が多い。溶融塩を用いることでこの問題を解決できる可能性があると考えられる。
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