研究課題
雌性両全異株に重イオンビームを照射することで、植物Y染色体の進化を再現できるのではないかと考えている。雌雄同株は優勢の雄性決定(M^F)と劣勢の雌性決定遺伝子(F^f)の相同染色体(M^F-F^f)からなっている。雄性決定(M^F)に劣勢の雄性不稔変異(M^s)が起こると、雄性不稔(M^s-F^f)と両性花(M^F-F^f)からなる雌性両全異株が出現する。M^Fをもつ染色体に優勢の雌性不稔遺伝子(F^S)が生じると、この染色体をもつものは雄株となる。これが三性株で一度雌株と雄株が出現すると、雌雄同株が集団から排除される。この選択圧のもとで染色体M^F-F^fが消失し、原X染色体(M^s-F^f)と原Y染色体(M^F-F^S)の組換えが抑制されXY染色体が完成する。マンテマ属を異種交配し染色体構造が複二倍体化した雌性両全異株を作出し、重イオンビームを照射することで染色体異常と雌性不稔を同時に誘起させ、非組換え領域をもった擬似的性染色体が出現するかどうかを調査する。これによってチャールズワースの模式図に代表される植物性染色体の進化モデルを実証する。重イオンビーム(重粒子線)は理研のリングサイクロトロンで発生させたものを用いた。初年度は以下の3つのテーマを中心に解析した。1.マンテマ属のBAC-FISHとマルチカラー競合FISHを用いた核型解析ゲノム解析とBAC-FISHの可能性を検討した。マンテマ属の染色体はほとんどが中部動原体で個々の染色体を識別することが難しい。BACクローンを直接プローブとして用い染色体特異的な繰り返し配列をスクリーニングして候補を得た。2.異種交配による雌性両全異株の作出S.latifolia x S.conicaの交配を試みている。S.latifoliaの核型は2n=22+XY、S.conicaは2n=22で、交雑が可能である。これらを交配して、雌雄両全異株や三性株の作出に取り掛かっている。3.重イオンビーム照射による雌雄異株の作出と性染色体重イオンビーム照射条件の検討をした。植物の染色体に最大の影響を与える照射条件を、致死率と生存した個体の核型解析から探り、いくつかの突然変異体を単離することに成功している。
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Planta (in press)
Genome
ページ: 520-530