●ススキスゴモリハダニを複数の地域から多数採集し、それらを遺伝的多様性を維持できる大きな個体群状態で飼育した。次に、そこから2個体群を選んで未交尾メスを任意にサンプル(各個体群で10血統)して、それぞれに強い近親交配(母-息子交配による)をさせ、近交系を作出すべく努力した。しかし、その系統のうち4系統だけがF4まで継続するという強い近親交配弱性が発生したため、次年度に再度近交系の補充が必要となった。 ●ススキスゴモリハダニ類に寄生する菌類の探索を本州、四国、九州において行い、九州の雲仙および佐賀から採取された2個体群から病原性の菌を分離することができた。自然環境でハダニ類から直接有害な病原菌を分離、特定した例はほとんどなく、きわめて重要な成果であった。 ●さらに、発見した菌の病原性についてその病原性を詳しく検討し、それが主としてスゴモリハダニ類の糞塊に発生すること、またその発生を制御しているのが他の無害な糞生菌であることをつきとめた。本研究成果は、平成19年1月に、日本応用動物昆虫学会の北海道支部会において発表した。また、平成18年8月のオランダアムステルダムの国際ダニ学会において発表(研究協力者、菊地の単独発表)した。 ●また、通常飼育個体群において菌の効果、処理濃度等についての基本的なデータを確立することができたので、本研究の目的である遺伝的多様性の低下と病原菌耐性の関係を検出する準備がほぼ整ったことになる。
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