実験室と異なり、自然環境下においては光環境は一定でない。光強度の日周や四季を通じた変化は規則正しいのに対し、風による雲の動きや被陰による変化は短時間の間に、しかも不規則に起こり、その変化量も極めて大きい。植物は、時々刻々と変化する環境に対して適応する能力を発達させてきたと考えられている。変異体のなかには光環境が一定に制御された培養室では表現型が顕著ではないが、屋外では表現型が明らかになるものが存在するのではないかと想像される。本研究では、自然環境に似た変動する光環境を創り出し、その光条件下ではじめて生育に異常を示す変異体をスクリーニングし、偶発する振幅の大きな光強度変化への適応機構を分子遺伝学的に解析することを目的とした。 日本医科器械株式会社の協力を得て「冷陰極ランプCCFL-1S」を用い、分単位で光強度をコントロールできる人工気象器を作製した。このシステムでは棚あたり12灯のCCFLランプを持ち、それらの光量はプログラムにより自在に調整できる。変動する光環境の下で形態異常を示す変異体を単離するために、スクリーニングに用いる光条件を検討した。その結果、5分毎に光強度が10μmolから120μmolに切り替わるプログラムが効果的であることが示唆された。この条件下で予備的にシロイヌナズナのアクティベーションタグライン350系統をスクリーニングし、野生型シロイヌナズナに比べて成育が抑制されているものを数系統選抜した。それらの変異体の成育抑制の再現性を確認後、本格的なスクリーニングを開始したいと考えている。
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