実験室と異なり、自然環境下においては光環境は一定でない。光強度の日周や四季を通じた変化は規則正しいのに対し、風による雲の動きや被陰による変化は短時間の間に、しかも不規則に起こり、その変化量も極めて大きい。変異体のなかには光環境が一定の培養室では表現型が顕著ではないが、屋外では表現型が明らかになるものが存在するのではないかと想像される。本研究では、自然環境に似た光環境を創り出し、その光条件下ではじめて成育に異常を示す変異体をスクリーニングし、偶発する振幅の大きな光強度変化への適応機構を分子遺伝学的に解析することを目的とした。 前年度までの解析から冷陰極ランプCCFL-1Sでは光量が不足するが、LEDランプISL-150×150-RR(500μmol)を用いて15分毎に光強度を500μmolから0μmolに変化させると野生型シロイヌナズナの成長が抑制されることが明かとなった。今年度さらに詳細な光条件を検討したところ、660nmの赤色光を用いると、15分毎に光強度を200μmolから0μmolに変化させると子葉を展開した時点で成長が停止することが見出された。さらに470nmの青色光を1μmolの強度で追加すると、野生型植物の成長は回復したが、ステート遷移に関与するSTN7遺伝子の欠損株stn7の成長は抑制された。この結果は少なくとも上記の光条件で光強度を変化させたとき、野生型に比べ成育が遅延する変異体が存在することを意味する。この条件でシロイヌナズナのT-DNA挿入ラインをスクリーニングし、光強度の変化に対して高感受性の(成長抑制を示す)変異体を数ライン単離した。現在、T-DNAの挿入位置を調べ、原因となる遺伝子の同定を進めている。
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