研究課題/領域番号 |
18657027
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
沼田 英治 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70172749)
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研究分担者 |
品田 哲郎 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30271513)
泰仙 浩司 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60148690)
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キーワード | 行動生理 / 環境適応 / 走査型電子顕微鏡 / 透過型電子顕微鏡 / 孵化 / 湿度受容 |
研究概要 |
本研究の目的は、クマゼミが高い湿度に反応して孵化する生理機構を明らかにすることである。本年度は、卵の前半部分に湿度に対する感受性が存在することと、卵膜のすぐ内側にあるクチクラ膜に孔のような構造が存在することに注目して、「卵の前極付近にある液体の成分変化によって艀化が誘導される」および「高湿度によって卵殻や漿膜クチクラの物理的性質が変化して孵化が誘導される」という2つの仮説を検討した。各種溶液中に孵化直前の胚を浸した結果から、液体の成分変化によって孵化が誘導される仮説は支持されなかった。次に、透過型および走査型電子顕微鏡を用いて、卵の前半部の卵殻・漿膜クチクラの微細構造を、胚発生を追って調べた。胚発生が進むと、漿膜クチクラに孵化線という溝状の構造が観察され、ここが開裂することで孵化が容易になると考えられた。これは、電子顕微鏡レベルで漿膜クチクラに孵化線があることを示した初めての報告である。さらに、湿度によって孵化線の開裂に必要な力が変化すると考えられた。すなわち、高い湿度にさらされると、より弱い力で開裂する。また、湿度によって、卵殻の形態が変化することが明らかになった。したがって、高い湿度が与えられると、卵殻の形態が変化し、孵化前の幼虫が卵内でそれを知覚し孵化行動を開始するとともに、卵前方の孵化線が高湿度下で裂けやすくなることが加わって孵化にいたると考えられた。以上より、卵殻の物理的性質が変化して孵化が誘導される仮説が支持された。
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