研究課題
細胞のなかで起こる生化学的反応は温度依存的である。したがって、生物が低温や高温に順化する過程では遺伝子の発現状態が変化していると考えられる。しかし、この温度順化現象の分子機構の研究は動物においてはきわめて少ない。ニホンメダカの場合、生存できるのは5℃〜35℃とされている。われわれは、今回、メダカを用いて温度順化現象の分子機構の研究を計画した。本研究においては、まず、メダカの温度順化過程で変化を示す遺伝子群をクローン化し同定した。26℃で飼育したメダカを、12℃あるいは32℃の水槽に移し順化のため一定期間飼育した。各実験群および対照群のメダカより全RNAを抽出し、mRNA Differential Display法により温度順化においてmRNA発現レベルの変化を示す遺伝子を探索した。全体として15個の遺伝子において発現レベルの変化が見られたが、その中で低温順化において変化のもっとも顕著であった筋肉遺伝子発現に関与する転写因子TEF-1に着目した。TEF-1遺伝子は択一スプライシングによりTEF-1AとTEF-1Bの2種のmRNAを産生することが判明した。低温に移してからの時間経過において両mRNAのレベルを半定量的RT-PCR法により測定した結果、TEF-1AmRNAレベルは低下したが、TEF-1BmRNAレベルは上昇を示した。対照として、EF1α遺伝子の発現レベルには変化が見られなかった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件) 図書 (1件)
DNA Structure, Chromatin and Gene Expression
ページ: 167-180
Zoolog Sci. 23
ページ: 903-908
ページ: 785-791
