本研究は、植物の陸上進出と環境適応過程でどのような進化が起きたかを明らかにしようとする研究の一部である。陸上環境への適応の中で、これまであまり重視されてこなかった栄養塩類の確保という観点からアプローチしようと考えている。実際、VA菌根菌に関しては、コケ植物、シダ植物、種子植物というすべての陸上植物での共生が報告されている。本研究では、植物の陸上進出における、生物問共生の果たした重要性についての仮説の確立とその一部の検証を目的とする。そのため、コケ植物・シダ植物に加え、陸上植物の直接の祖先群であるシャジクモ類において、1)共生菌の広範囲な探索、2)共生菌の特異性・系統の解析、3)共生に関与したと推定されている遺伝子についての単離と、4)分子進化解析を行う。 本年度は、多様な陸上生物群およびシャジクモ類2種において、菌根菌が共生(寄生)しているかどうかの1次スクリーニングを行った。各植物の地下器官を、洗浄・滅菌後にDNAを抽出し、グロメロ菌門に最適化した18S rRNAプライマーセットを用いてPCRを行った。増幅した断片はSSCP法により分離し、複数のバンドが得られた場合はゲルから切り出して単離した。その結果得られたクローンのシークエンスを行い約50が菌根菌由来と判断された。これらの材料は、19年度における2次スクリーニング、すなわち本当に各植物体から得られたかどうかのチェックを行い、系統解析に用いる。
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