昨年度のテトラヌクレオソームの電子顕微鏡観察に引き続き、今年度はヌクレオソームの数を増やして15個、20個連なったオリゴヌクレオソームの、負染色法による電顕観察を行い、新たにクライオ電子顕微鏡観察も試みた。 構造解析に適したDNA配列601からなるプラスミドDNAを構築し、大腸菌で発現、精製したコアヒストンを用いてオリゴヌクレオソームを再構成した。2%酢酸ウラニルを用いて負染色した試料を、電子顕微鏡によって観察し、15個、20個のモノヌクレオソームが数珠状に連なったオリゴヌクレオソームの形成が確認できた。また、金属イオンの存在下で、高度にパッキングした30nm fiber様の形態も観察できた。更にクロマチンリモデリング因子であるFACTと、このオリゴヌクレオソームの相互作用を観察するため、FACTのSSRP1とSPT16の二つのサブユニットを共発現させ、複合体の精製を行った。FACT複合体の電子顕微鏡観察を行ったところ、様々なサイズの粒子が観察され、FACTがオリゴマー状態で存在する事が示唆された。一部15nmほどの大きさの分子が検出され、これがFACTモノマーであると推定された。このFACT複合体を上記のオリゴヌクレオソーム溶液に加え、その形態の時間変化を負染色法によって電顕で観察した。しかしながら現在のところ、有意な変化を見いだすには至っていない。現在、溶液中の状態をより正確に反映するクライオ電子顕微鏡観察を開始しており、オリゴヌクレオソームの凍結試料の観察に既に成功し、負染色法と同様の数珠状に連なった形態を観察できた。電子分光法を用いることで無染色であるにも関わらず、良質の画像の記録に成功し、DNAも明確に可視化する事ができた。
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