本研究の目標は、微細加工技術(MEMS)で作成したマイクロチャンバー上の人工膜にABCトランスポーターを再構成し、その輸送活性をリアルタイムで測定する系を確立することである。本研究では、ABCトランスポーターを平面膜に組み込む必要があるが、好熱菌のABCトランスポーターの大腸菌を宿主とした発現系の構築が必要である。本年度においてATPase活性を保持したヘテロオリゴマータイプのABCトランスポーターの発現に成功している。 膜タンパク質を平面膜に再構成すること自体容易でなく、成功例も少ない。また、ABCトランスポーターは複数の異なるサブユニットからなるオリゴマー蛋白質であり、解離による活性の喪失等をさけつためには、オリゴマーの形成過程の理解が必要である。同じ好熱菌から調製したオリゴマー蛋白質であるV-ATPaseのサブユニットからの再構成実験によりヌクレオチドがオリゴマー形成に必須であることが判明した。実際にABCトランスポーターを平面膜に組み込むわけだが、その確認のためにこれに蛍光分子を導入し、1分子蛍光観察により平面膜への組み込みを調べた。効率は悪いものの、平面膜への組み込みは確認できた。 以上のように、本申請研究の目標でもある膜マイクロチャンバーによる活性計測計の構築にはいる道筋をつけることができた。
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