研究概要 |
本研究は,膜蛋白質を容易に再構成でき,電気生理的研究(パッチ電極の刺入)が可能な大きさと丈夫さを兼ね備えた新しいリポソーム系を,ゲル様物質の表面を透析法によって脂質膜で覆うことにより作成して,最終的に膜蛋白質の一分子観察系に利用することを試みている. 本年度は,アガロースでできたゲルの小球(直径50〜100μm)の表面にまず透析法によって脂質膜を付着させることを試みた.脂質の付着は蛍光性の脂質を添加して顕微鏡で観察することにより確かめた.その結果,脂質はゲル表面によく付着したが,ゲルの内部まで浸透してしまい,二重層にはなっていないことが,蛍光強度やFRAPの解析から明らかになった.そこで,ゲル表面の化学的性質の異なるものを試すため,市販の疎水性カラム用ゲル,陰イオン交換カラム用ゲル,陽イオン交換カラム用ゲル等について同様の操作を行った.更に脂質の付着方法についても,あらかじめ脂質のみで作成したリポソームを付着・融合させる方法を試みた.その結果,ゲルの表面の性質によって脂質の付着状況は確かに変化したが,二重層を作ることはできていない.そこで,最終目標からは遠ざかるが,ガラスの小球に対して,上記の方法で脂質を付着させたところ,ガラスには脂質は浸透しないので,表面だけに脂質が薄く観察された.FRAPにより流動性を調べようとしたが,励起光がガラスの球体で反射・散乱してしまい,この点に関しては確認できていない.当初の計画にあったアクリルアミドの球体については,調製が難しく.まだあまり試行を重ねていない.
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