研究課題
ヒト細胞における相同組換え頻度を上昇させる基本原理を求めて、出芽酵母で非常に高い組換えが生じるswr1変異株の解析を進めた。酵母の2倍体細胞のHIS1座位においてHis1-1とHis1-7の対立遺伝子間で自発的な相同組換えにより野生型のHIS1遺伝子が復活することが知られている。H2AZというヒストンバリアントをH2Aと交換するのに必要なSwr1複合体の主要なサブユニットSwr1を欠損した株において野生株の10倍以上の組換えの亢進が観察された。そこで、htz1(H2AZを欠損した株)変異株の組換え頻度を調べたところ、Swr1株と同様に組換えが亢進していた。このことはゲノム全体で10%程度の割合で存在するH2AZには、これまで報告されていた転写制御以外にも、望まざる相同組換えを抑制する機能があることがわかった。次に、そのメカニズムを追求することにした。これまで転写の亢進が相同組換え頻度にも影響を与えることが報告されていることから、swr1株でHIS1遺伝子の転写量に変化があるか否かRT-PCR法を用いて調べた。その結果、少なくともHIS1遺伝子の転写はSwr1やHtz1の欠損により影響を受けなかった。実際にHIS1遺伝子座にHtz1が結合しているか否かChIP(クロマチン免疫沈降法)により調べ、Htz1は主にHis1をコードする領域の5'上流および3'下流(遺伝子間領域)に結合していた。このことから、Htz1は遺伝子間領域に結合し、余分な組換えを抑制していると考えられた。一方、Swr1複合体と共通のサブユニットを共有するIno80複合体には組換えを促進する機能があることを発見し論文発表した。本基礎研究により、ヒト細胞でH2AZあるいはSWR1をsiRNA法でノックダウンして組換えの効率を上げる戦略が確定できた。
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