研究課題
本研究では、ポリADPリボシル(PAR)化修飾が分裂期スピンドルの制御における重要性を明らかにすることを目的とした。目的の実験に先立って、PAR化修飾特異的な抗体を用いてその検出系を確立した。PAR抗体でウエスタンブロットを行うとPAR化されたタンパク質が116-200kDaの広い範囲にスメアとして検出することに成功し、このPARスメアが分裂期では間期と比らべて約8倍に増加することが分かった。次いで、この抗体を用いて細胞染色を行うと、紡錘体極、スピンドル、動原体が特異的に染色され、PAR化修飾の検出するアッセイを確立した。さらに、スピンドルの形成および機能に必要なPARPのサブ・タイプを明らかにするために、HeLa細胞において、候補のPARP酵素に対してRNAiをおこない、PAR化タンパク質の量的質的変化を検討する。その結果、タンキラーゼと呼ばれるPARPが重要であることが判明した。つまり、タンキラーゼのノックダウンした細胞では、スピンドルの形態が崩れ、正常に機能しないために、染色体は両方構成を獲得しないまま分裂期において停滞するといったことが観察された。分裂期のPAR化修飾におけるタンキラーゼの寄与を明らかにするために、タンキラーゼを除去した細胞におけるPAR化修飾の変化を調べたところ、PAR化修飾の総量には大きな変化は見られなかった。細胞染色では、PAR化修飾は紡錘体極とスピンドルには観察できたが、動原体への分布が検出できなかったという興味深い結果が得られ、タンキラーゼが動原体のタンパク質のPAR化修飾を特異的に触媒して、動原体の機能、ひいてはスピンドルの機能に重要な役割を担っていることが示唆された。現在、これらの可能性を検証するためのアッセイの開発中に取り組んでいる。
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