研究課題
本研究の目的は、遺伝子発現用赤外レーザ顕微鏡を利用して、線虫C. elegans個体において特定の時期に狙った単一の細胞で熱ショックプロモーター下の目的の遺伝子を発現させることによって、細胞形態・運命制御因子の発生過程での機能を解析することである。陰門前駆細胞(VPC)でのセマフォリンのreverse signalの検討、および表皮細胞での異所的遺伝子発現誘導によるseam cell細胞極性決定に関わるWnt signalの同定を試み、以下の結果を得た。1)sm-1、plx-1のモザイク状発現誘導による両遺伝子のVPCにおける機能の解析。ショックプロモーターhsp-16.2下にsmp-1 cDNAを結合したプラスミドを、hsp-16.2::gfpとともC. elegansに導入した系統を用いて実験を行った。smp-1変異の遺伝学的背景で2個の隣接するVPCに野生型smp-1遺伝子産物を発現させると、両者の間の細胞伸長の不停止(overlapping)表現型が救済され、隣接する2細胞双方にセマフォリンシグナルが伝わることが細胞の伸長停止に十分であることが確認された。さらに、このときSMP-1の細胞内領域全体は伸長停止に不必要であることが明らかになった。昨年度の結果と合わせて以上の結果はSMP-1からのreverse signalが存在しない、もしくは、存在してもVPC伸長停止には必要ないことを支持している。2)Wnt遺伝子の異所発現による幼虫表皮細胞の極性決定機構の解析。昨年度に作成したWnt cDNAをC. elegans熱ショックプロモーターhsp-16.2下に結合したトランスジーンを持つ形質転換体を用いて、実験を行った。L2-L3幼虫の単一seam cellでmom-2とcwn-2とをそれぞれ発現させ、その後の隣接する細胞の発生を検討したが、顕著な異常は認められなかった。
すべて 2007
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Genetics 176
ページ: 1591-1907
Proceedings of IEEE 2007 International Symposium on Micro-NanoMechatronics and Human Science COE symposium
ページ: 139-144