トリ胚を用いたエレクトロポレーション法は、さまざまな遺伝子を目的とする組織に導入する方法として極めて有効である。しかしながら、従来のエレクトロポレーション法の問題として、導入された遺伝子の発現が2〜3日間しか維持されないことであった。これは導入された遺伝子が核内染色体に組み込まれないために、細胞の増殖に伴って遺伝子コピー数が減少し、やがては消失してしまうことが原因と考えられていた。我々はこれまでに、これらの問題を克服するために、小型魚類で用いられているTol2トランスポゾン法をトリ胚エレクトロポレーション法に応用し、導入遺伝子をトリゲノム内に安定的に組み込むことに成功している。今年度はさらにこの方法を改良し、我々が最近トリ胚で確立したTet-on法とを組み合わせ、ゲノム上に安定的に組み込まれた外来遺伝子の発現時期を人工的にコントロールできる手法を確立した。準備したplasmidは以下の通り:1)目的とする遺伝子(たとえばEGFP)をTRE(Tetracycline-responsive element)によってドライブさせ、さらにこれらの発現カセットをTol2vectorに組み込んだplasmid。2)rtTA-M2(Dox依存的にTREに結合して転写を活性化させる因子をコードする)を組み込んだTol2vector。3)Tol2vector上の遺伝子カセットがゲノムに組み込まれるために必要なトランスポゼースを発現させるCAGGS-TP。これら3種のplasmidを、エレクトロポレーション法を用いてトリ胚内に共同入し、さらに3日後にDoxを注入すると、EGFPの発現が開始された。これらの新規の方法を用いると、これまで不可能であった胚発生の後期過程におこる器官形成における遺伝子の機能の解析が可能となる。
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