研究概要 |
マウス、ヒトのPLCZ遺伝子cDNA塩基配列を用いて、フグゲノムよりフグPLCZ遺伝子のゲノム塩基配列を決定した。さらにフグPLCZ遺伝子塩基配列をもとに、メダカゲノムデータベースよりメダカPLCZ遺伝子のゲノム塩基配列を決定し、メダカPLCZのcDNA塩基配列を予測した。この予測をもとにプライマーを設計し、メダカ(O. latipes、Hd-rR)精巣のcDNAライブラリよりメダカPLCZcDNAクローンを単離し、メダカPLCZcDNA塩基配列を決定した。メダカPLCZmRNAをin vitroにて合成し、マウス卵にマイクロインジェクションした結果、哺乳類PLCZと同様に、メダカPLCZもマウス卵においてカルシウムオシレーション反応誘発能を有することを確認し、魚類のPLCZも精子ファクターとしての機能を有し得ることを示した。また、哺乳類(マウス、ヒト、ラット)PLCZのcDNA塩基配列との比較から、メダカPLCZが核移行配列を欠いており、哺乳類(マウス、ヒト)PLCZとは異なってマウス卵核に移行しないことを見出した(Itoh, et. al., 2007)。 メダカPLCZ遺伝子の種間多様性を解明するために、Oryzias属の近縁種4種(ハイナンメダカ、インドメダカ、ルソンメダカ、セレベスメダカ)の精巣よりcDNAライブラリを調整し、インドメダカ、セレベスメダカのPLCZcDNA塩基配列を決定した。メダカ(O. latipes)は種内における遺伝的多様性が極めて大きいことが知られているが、インドメダカ、セレベスメダカのPLCZcDNA塩基配列はメダカ(O. latipes)のそれに非常に類似していた。受精関連遺伝子が大きな多様性を有することを予想していたが、今回得られた結果は全く正反対の結果であり、受精関連遺伝子は何らかの機構によってその多様性を制限されている可能性も考えられる。近縁種以外の魚種におけるPLCZ cDNA塩基配列を明らかにするために、シロサケ、ニシン、カタクチイワシ、ムギイワシ、イシモチ、ネンブツダイ、ゼブラフィッシュの精巣サンプルを収集し、解析を進めつつある。
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