生理的多型性の背景となるべき寒冷に対するヒトの適応反応が、どのような遺伝子によって調整されているかの知見は現在の時点で明らかにされていない。しかし、多くの研究からストレス反応は、出芽酵母、線虫、ショウジョウバエ、そしてマウスに至るまで共通する遺伝的背景を持つことが、現在では仮定でき局面を迎えている。本年はその仮定に基づいて、ヒトの寒冷反応の生理的多型性の遺伝的背景を探るために、先ずマウスを用いた寒冷反応へのシステムの構築とパイロットスタディを行った。 評価系 1.モデル動物 マウス(C57BL/6ストレインから始める)を選択した。酵母や線虫を用いた、ストレス反応に関わる遺伝子候補群を基礎として、マウス個体にて検討する。 2.寒冷刺激に対するストレス反応の指標候補 (1)ミトコンドリアでのエネルギー代謝・酸化ストレス反応に関わる分子 (2)中枢性、あるいは末梢性に自律神経制御に関わる分子群 2.評価系 一定時間4-5度の寒冷刺激を与えたマウスより、褐色細胞・脳下垂体などいくつかの組織を採取する。寒冷刺激をあたえないマウスをコントロールとする。 3.評価方法 寒冷刺激を与えたマウスと、与えないコントロールマウスからの同一組織を用いてRNAを抽出し、cDNAライブラリーをそれぞれ作製する。それぞれのライブラリーで発現に差をみとめる遺伝子をPCRにて増幅する。差を認めた遺伝子を解析(シークエンス)して同定し、各評価指標に基づいたグループに分ける。遺伝子の発現の差に、多型性・機能と結びつくものを認めるかを評価する。
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