研究課題/領域番号 |
18657082
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
名波 直道 静岡大学, 農学部, 助教授 (10291395)
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研究分担者 |
安村 基 静岡大学, 農学部, 教授 (40143408)
渡邊 拡 静岡大学, 農学部, 助教授 (20293714)
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キーワード | 高齢者福祉施設 / 室内環境 / 建築構造・材料 / 室内空気質 / 温熱環境 / 心理評価 / 生理応答 / 香気成分 |
研究概要 |
静岡市内の特別養護老人ホーム「竜爪園」を対象として、高齢者居住施設の居住性を検討した。当該施設は隣接した木造3棟および鉄筋コンクリート(RC)造棟により構成されるため、構造・使用材料による比較が可能である。木造各棟は小屋組架構方式が異なり、室内に暴露された木材・木質材料の樹種および材積に違いがある。 居住空間が心理に及ぼす影響を評価するために、学生を被験者として室内の視覚的印象をSD法にて評価した。視覚的印象は「明度/安心感」、「情緒/自然感」、「斬新/都会感」の3因子に分類された。RC造棟と比較して、木造棟では明るく開放的で安心でき、暖かく快適で、また面白みがあり、自然で健康的であるとの評価を得た。木造小屋組の違いでは、和小屋は古く田舎的であると、洋小屋は新しく都会的であると感じていた。室内の印象は内装材料や構工法により異なることが明らかとなった。 各棟共用部分の温熱環境を測定したところ、温度・相対湿度とも木造棟とRC造棟に大きな差は見られなかった。温度に関しては暖房期および空調を使用しない期間において、木造棟に比してRC造棟は若干低い値を示した。湿度では冷房期および空調なしの時期で、木造よりRC造の変動がやや大きかった。 施設内の空気質を検討するため、シックハウス原因物質や天然由来香気成分等について夏期および冬期に実態を調査した。使用木材や仕上げ塗布剤等から放散されるVOCと室内空気質との関係も検討した。何れの棟においても厚生労働省のガイドラインに示された化学物質の気中濃度は低く、良好な空気環境にあった。季節による成分構成に変化は見られなかった。木造棟では木材に由来する成分が検出されたが、エタノールは消毒剤、テルペン類は天然系仕上げ塗布剤に主として由来すると考えられた。 以上より、木造による高齢者施設は、適切な設計を行うことにより良好な居住環境を実現できると考えられる。
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