研究概要 |
本研究は、遺伝子組換え食品の安全性を評価するため、遺伝子組換え植物におけるタンパク質の変動を漏れなく解析することができるプロテオーム解析技術を確立することを目的とする。まず、植物性食品からのタンパク質の抽出方法を検討したところ、試料を液体窒素中で磨砕し、尿素、NP-40を含む緩衝液に懸濁後、ガラスビーズを加え、超音波処理を行うと効果的にタンパク質を抽出できることがわかった。この方法によってエンドウの形質転換体のタンパク質を抽出し、蛍光デファレンスゲル二次元電気泳動(DIGE)によって遺伝子導入によるタンパク質組成の変化を調べた。形質転換体は、イングンマメのαアミラーゼインヒビター遺伝子をエンドウに導入して作出された。DICEにより形質転換体においてαアミラーゼインヒビターの発現を確認できた。また、ほかに発現量が変動するタンパク質(目的外タンパク質)が15種類検出された。そこで、これらのタンパク質を質量分析装置によって同定した。その結果、ストレスと関連して発現するタンパク質など12種類のタンパク質を同定することができた。同定されたタンパク質の中には機能が未知のものもあった。この結果は、プロテオーム解析手法を用いて形質転換体で発現した目的外タンパク質を検出できる可能性があることを示している。次に、ベニザケのI型成長ホルモン遺伝子をマイクロインジェクション法によってアマゴに導入し、体長が非形質転換体の約10倍になった形質転換体を得た。形質転換体と非形質転換体の肝臓と腸からタンパク質を抽出し、DIGEでタンパク質組成の違いを調べた。その結果、全部で約1,800のタンパク質を検出し、うち37のタンパク質の発現に形質転換体と非形質転換体との間で有意な差があることがわかった。これらのタンパク質には、ヘモペキシンのような溶血に伴って減少するタンパク質が含まれていた。
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