研究概要 |
水資源の枯渇に対応するため,塩水(あるいはかん水)を作物の灌漑水として利用するための研究を行った.これまでの塩水を淡水化した後に使う方法では,淡水化そのものにエネルギーを消費すること,淡水の運搬中に損失があるとともにコストがかかること,使用する資材が環境に還元できないものが多く淡水化によって別の環境破壊を引き起こすなどの問題点があった.これらの問題点を解消するために,塩水を作物の間近で淡水化する,太陽放射エネルギーと作物の蒸散作用を利用して淡水化する,用いる資材を節減することを考慮した方法を試験した.まず,通常の淡水化プラントで使用されている逆浸透膜を根域に設置し,その上に土壊を詰め土壊という多孔質体の蒸発力によって逆浸透を起こすことを試みた.逆浸透膜を隔てられた塩水から土壊へ逆浸透が起こったが,塩の排除率は30%程度と低いものであり,これは膜の乾燥による劣化に起因するものと推定された.そこで,膜周囲の水分含有率が低下しないように作物の根を張らせる方法を試み,イオン交換樹脂を使って塩を除去する方法と成長を比較した.その結果,現在まだ栽培中であるが,逆浸透膜を用いた作物は最も小さく,イオン交換樹脂を使ったものと土壊のみのものとは同じ程度の生育を示している.しかし徐々にイオン交換樹脂と土壊のみの植物の枯れ上がりが進行しているのに対して,逆浸透膜を用いた植物は生育を続けている.さらに追跡調査をする予定である. 一方,土壊の水分,温度および電気伝導率(EC)を同時に測定する新しいセンサーの性能試験を行った.その結果,センサーによって感度が著しく異なること,土壊塩分濃度によって土壊水分の測定値が変わること,ECの値も逆に土壊水分によって影響されることを見出し,適切な校正方法を探究した.
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