研究概要 |
1,トマトABC輸送体遺伝子のクローニングと生化学的性質の解析 かずさDNA研究所のcDNAリソースから,10種のトマトABC輸送体クローンの譲渡を受けた.そのうちの3種(SIMRP1, SIWBC1, SIWBC2)は完全長であったがその他は部分長であったため,RACE法による全長クローニングを進めており,既に1種(SIPDR1)の全長を得た.SIMRP1, SIWBC1, SIWBC2,SIPDR1に加え,部分長のSIMDR1の遺伝子の発現解析を行ったところ,SIWBC1とSIWBC2は全身で恒常的に発現していたが,SIPDR1は果実での発現が高かった.また,オーキシン輸送に関わるMRPファミリーに属するSIMRP1の発現が開花直後の果実で高かったことから,SIMRP1が果実成長のためのオーキシン輸送に機能している可能性が示唆された.各タンパク質の細胞内局在を明らかにするために,蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質をシロイヌナズナ培養細胞で発現させたが,明瞭なシグナルは検出できていない.今後,蛍光タンパク質を発現させるホストや発現系を検討して,生理機能を推定するために重要な細胞内局在の特定を急ぐ. 2,ABC輸送体の形質転換体の作出 実際に遺伝子がどのような生理機能を持つのかを知るために,各遺伝子の発現抑制形質転換体の作出を進めている.既に,恒常的発現CaM35Sプロモーター下でSIPDR1遺伝子をRNAi法で発現抑制した形質転換トマトを作出した.その転換体の葉や果実での表現型の変化は顕著ではないが,節間が長いという特徴を示している.その他の遺伝子についても形質転換体の作出を進めるとともに,SlPDR1の発現抑制体については,ストレス耐性や病原抵抗性の変化や二次代謝産物の蓄積量の変化について,今後調べていく.
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