研究概要 |
木本植物である果樹類には開花結実の全く見られない幼木相とよばれる期間が存在する.この幼木相は長いものでは10年以上にわたり,果樹類の育種や遺伝解析を行う際の障壁となっている.本研究は,近年シロイヌナズナの研究から明らかにされた花成関連遺伝子であるFT遺伝子を利用することで,汎用性のある果樹類の生殖形質早期評価システムを開発するために,立案された.研究初年度にあたる本年度は,以下の点について検討した. (1)FT相同遺伝子の単離とベクターの構築:サクラ属果樹類のFT相同遺伝子を単離して解析するととともにそれを植物で発現させるためのベクターの構築した. (2)早咲き誘導性台木の作出:FT相同遺伝子を過剰発現させることで穂木の早期開花を誘導するための形質転換台木の作出のため,FTによるサクラ属果樹の遺伝子組換えを行った. (3)アグロバクテリウムを用いたFTの一過性発現による早期開花の誘導:サクラ属果樹の発芽間もない幼若実生やシュート培養を利用して,葉へのインフィルトレーション法によりFT相同遺伝子の一過性発現を誘導し開花誘導を試みたが,早期開花は認められなかった. (4)クラウンゴールを利用したFT発現と早期開花の誘導:植物でのFT相同遺伝子発現用のキメラ遺伝子を配置したバイナリーベクターを導入した野生株のアグロバクテリウムを感染させて生じたクラウンゴールでFT相同遺伝子の発現を誘導し,開花誘導することができるかどうか検討したが,早期開花は見られなかった.
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