昨年度に実験で茎頂分裂組織にパーティクルガンで傷つけ処理を施すことで、キクの茎頂から多数のシュートが発生することを確認した。また、キクやキャベツは品種によって傷を付けた茎頂分裂組織は傷口を修復することを組織学的な観察によって確認した。ただし、本実験は実験を行う時期や植物体の状態によって結果が大きく左右されるため、多数の試行が必要であると考えられた。そこで、本年度はまず実験効率を上げることを目的として、茎頂分裂組織を機械的に露出する装置を開発することとした。0.7KPaの圧縮空気を茎頂部に噴射することによって葉原基を吹き飛ばす装置を開発することができた。本装置を用いるとキク'神馬'の茎頂分裂組織を約7秒で、また、ダリアの茎頂分裂組織を約8秒で露出することができる。さらには、顕微鏡を用いなくとも80%以上の割合で茎頂分裂組織を露出することが可能であることを認めた。本装置で露出させた茎頂分裂組織は圧縮空気による付傷は認められなかった。本装置を用いて、キク'神馬'の茎頂分裂組織を顕微鏡下で露出させ超微小茎頂分裂組織培養を行ったところ、問題なく外植体が生存し植物体に生長することを確認した。そこで、本装置を用いて茎頂分裂組織を露出させたシュートにex vitroで金粒子を撃ち込み、処理した茎頂分裂組織を低融点ゲル化寒天で包埋し、挿し木した。これまでの観察で茎頂分裂組織の修復が見られる個体が多かったが、中には茎頂分裂組織が分割され複数のシュートが発生する可能性がある個体があった。多数の個体を短時間で処理する実験系が開発されたことから、茎頂分割による周縁キメラ植物の増殖などを目的とした詳細な実験ができる様になった。
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