キュウリモザイクウイルス(CMV)の弱毒系統(CM95)と強毒系統(CM95R)をペチュニアCOO1に接種すると、前者では白に淡い紫が混じった花色になったのに対して、後者では、濃い紫のにじみが花の大半を占める花色になった。このペチュニアでは色素合成遺伝子(CHS)がサイレンシング(PTGS)によって抑制されており、本来白い花を咲かせるため、紫のにじみはCMV感染がこのPTGSを阻害した結果であると考えられる。この時にウイルス濃度は弱毒と強毒間で大差ないことをELISA法によって確認している。さらに、CMVの接種源にサテライトRNA (satRNA) (CMVに寄生して増殖する)を混合してペチュニアに接種したところ、CM95に感染した植物の花色は純白に近く、satRNAがCMVによるCHSのPTGSへの影響を見かけ上解消している結果となった。ノーザン解析によってsatRNAをもったCM95のウイルスRNAを解析したところ、satRNAをもたないものに比較して20〜30%程度に減少していた。興味深いことに、CM95に感染した植物からはウィルスに対するsiRNAは検出されず、satRNAが共存した場合には検出されるようになることが判明し、satRNAがウイルスRNAのsiRNA生成に関与することが示唆された。現在、この原因についてプロトプラス系を用いて解析中であり、弱毒ウイルスの実用化にsatRNAの関与が重要であるという結論の根拠になるものと考えている。また、この実験と併行して、CMVのPTGSサプレッサーである2bタンパク質に結合する宿主因子(シロイヌナズナ)を酵母two-hybridシステムでスクリーニングし、7つの候補遺伝子を得ている。
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