研究課題
(1) リンゴ樹に表生・内生する微生物群の収集、同定、遺伝子分離と保存新たに、慣行農薬防除園2箇所、無農薬・減農薬栽培園2箇所から、葉圏に生息する微生物を分離し、真菌17属、細菌10属を同定した。防除方法の違いが葉圏微生物相の違いに及ぼす影響を分析し、農薬散布により特に細菌の生息数が減少する傾向を見出した。(2) リンゴ樹の表生・内生微生物群の一括診断のためのマクロアレイの改良昨年度試作した真菌(病原菌10属・非病原菌14属)と細菌(病原菌2属・非病原菌12属)のcDNAマクロアレイを評価した結果、cDNAアレイ(100-300bp)では配列が長すぎて個々の微生物の完全な特異的識別が困難であった。そこで、分離された微生物と病原菌の遺伝子配列を再分析して各微生物に特異的な配列を抽出し、真菌と細菌それぞれ20種からなるオリゴヌクレオチドアレイを試作した。その結果、同属の近縁種の1-2の例外を除いて、非特異的反応なしにそれぞれの微生物を識別することに成功した。このマクロアレイを用いて、実際の圃場から採集したリンゴ葉面微生物の一括診断を行った結果、少なくとも優占する5-6種程度の微生物の定量的な同定が可能であった。即ち、本研究で目的として、リンゴ葉圏微生物の一括診断マクロアレイの開発に成功した。(3) 様々な環境条件下のリンゴ微生物相の資料収集平成18年度・ニュージーランド・オタゴ地区、平成19年度・米国・オレゴン州に引き続き、平成20年度は、北イタリア(トリノ市郊外)の果樹栽培地帯を訪問して、リンゴ、ナシ、アプリコット等の栽培と病害防除に関する情報を収集した。また、中国・北京市の無農薬栽培リンゴ園の病害発生状況を調査し、葉圏微生物のDNA試料を収集した。一部をマクロアレイ診断に供した結果、栽培環境の違いで微生物相が大きく異なる可能性が示唆された。
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