エンドウ褐紋病菌が生産するサプレッサーは、宿主による異物認識やその下流の情報伝達機構を標的とする。H18年度では、宿主受容化の分子機構を明らかにする目的で、モデル宿主Medicago truncatulaからサプレッサーによって誘導される遺伝子群をSuppression subtractive hybridization(SSH)法で解析した。その結果、152遺伝子が単離され、これらには1次代謝、情報伝達、分子シャペロン、ATP依存性酵素などが含まれていた。SSH法で単離したLipoxygenase (Lox)に注目し、その下流のAllen oxide synthase (AOS)、 Allen oxide cyclase (AOC)ならびに12-oxo-PDA reductase (OPR)の応答について解析した結果、これらの遺伝子発現はエリシターの存否に関わらず、サプレッサー処理1時間以内に増加し、主要な防御を担うサリチル酸(SA)経路の活性化(PR10-1)より早い応答として認められた。先に、M. truncatulaにおいても、サリチル酸とジャスモン酸を介した情報伝達経路が存在し、双方が相互作用することを示してきた。次年度には、当該遺伝子のサイレンシングを含め、ジャスモン酸合成系遺伝子の亢進とサプレッサーの作用機構との関係について解析を進め、褐紋病菌-M. truncatulaにおける基本的親和性確立の分子機構を明らかにする予定である。
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