当該研究年度当初計画において提案した2.FISHシグナル間の測定方法の確立、3.組み換え依存的な連関地図との歪みの検出を中心に研究を推進させた。 前年度に計画2.の一部を実行済みであったため、本年度は確立された方法を洗練させるとともに3.の研究に取り組んだ。その結果、BACシグナルをランドマークとした染色体の物理的な距離と組み換えに依存した連関地図との遺伝的距離との間には大部分のマーカーについて大まかな一致をみた。これにより、鱗翅目昆虫においてFISHによる遺伝子間の物理地図は、交配を介した組み換え価による連関地図に代替可能な手法であることが明らかとなった。他方、染色体の一部に物理距離と遺伝距離の齟齬が認められ、前者が後者よりも大きくなるならびにその逆の部位が全体の約1/4染色体で認められた。それらは、それぞれ組み換えのコールドならびにホットスポットの可能性が非常に高い部位である。総じて、組み替えのコールドスポットと考えられる部位は染色体内部に存在し、ホットスポットと考えられる部位は染色体両端に存在した。このことと、多動原体型染色体の動原体分散型との関わりについて今後興味が持たれる。また、これらの部位における遺伝子配列の異同を検討するとともに染色体構造との比較を行うためにも、現在進行しているカイコゲノム配列情報の再アセンブリーの完成が待たれる。多動原体型染色体の組み替えのコールドおよびホットスポットの確定のためには鱗翅目昆虫におけるfiber-FISHの確立が重要となっており、現在開発を行っている。
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