研究概要 |
我々は先に、イネ大粒品種・秋田63号が9.8t/haの超多収性を示すことを圃場試験で実証すると共にその超多収要因の解析を行い、秋田63号が、(1)単位吸収窒素量当たりのシンク容量が従来品種に比べ格段と大きいこと、(2)光合成産物の籾への転流効率に優れていること、(3)単位吸収窒素量当たりの玄米生産効率に優れること等を明らかにしてきた。 今年度は、秋田63号の単位吸収窒素量当たりの収穫物容量が大きいことおよび乾物の籾への転流効率に優れているとの品種特性が、将来に予想される高CO環境条件下では収量増に対し優位に働き、更なる高収量が期待されると想定し、それを実証することを目的とした。 栽培は、岩手県・雫石のFACE実験圃場で行なった。対照品種にあきたこまちを選び、施肥水準は標準施肥区と無窒素区の2区を設け、それぞれ3連で行なった。その結果、秋田63号の収量は、あきたこまちに対し普通大気条件では、施肥区で1,19倍、無窒素区で1.25倍の収量を示した。高CO2条件下での秋田63号の収量は、あきたこまちに対しさらに高くなり、施肥区で1,25倍、無施肥区で1.37倍の収量となった。 以上より、秋田63号の収量は、あきたこまちに較べふつう大気CO2条件、高CO2条件のいずれの条件下においても、窒素栄養レベルによらず多収性が発揮され、高CO2条件下では普通CO2条件下よりさらに増収となることが示された。 これらの結果は、「単位吸収窒素量当たりのシンク容量の拡大は、高CO2環境下でのイネの収量性の増大に大きく寄与する」ことを示すものである。
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