研究概要 |
脂質マイクロドメイン(ラフト)は、機能タンパク質がスフィンゴ脂質やエルゴステロールとともに形成するクラスターで、出芽酵母では数種の膜タンパク質のラフト局在が示唆されている。しかし、それらが生細胞内で真にクラスター化しているかどうかは不明である。本研究課題ではFRET(蛍光エネルギー移動)計測を利用し、ラフトマーカーの一つ、H^+-ATPase Pmalの細胞膜上での分散状態を調べた。 計画当初はPmalをYFPおよびCFP融合タンパク質として発現させ、FRETを計測する予定だったが、これら2種類のタンパク質の存在比を任意に変えるのが困難なことが判明した。そこで、HA-Pmalをゲノム上に持つ菌株を入手し、市販の抗HAモノクローナル抗体を用いる戦法に変更した。Cy3,Cy5標識キットを用い、このモノクローナル抗体1分子当たり1〜2個のCy3またはCy5が結合したフラクションをゲル濾過で抽出した。HA-Pmal細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、様々な量比で混合したCy3標識抗HA抗体とCy5標識抗HA抗体で細胞を染色した。次いで、共焦点レーザー顕微鏡FV-500(オリンパス)のもと、Cy5のブリーチするのCy3の蛍光強度を定量した(アクセプターフォトブリーチング法)。現在のところデータの振れは大きいものの、FRET効率はCy5蛍光強度に依存し、Cy3:Cy5強度比には依存しないことがわかった。このことは、細胞膜上でオリゴマーを形成するという生化学的知見に反し、クラスター化したPmalの割合は低く、多くの分子はランダムに分布すること示唆している。今後はデータの振れを取り除くこと、ならびに圧力や温度、化学物質などラフト構造に影響する条件がHA-Pmalの分散状態にどのような効果を及ぼすのかを調べ、Pmalのダイナミクスを解明する予定である。
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