Δlac-アセトゲニンは、研究代表者が独自に開発したミトコンドリア複合体-Iの強力な阻害剤である。Δlac-アセトゲニンの側鎖部分に、光スイッチとして広く利用されているアゾベンゼン構造を導入し、光照射によってトランス体(疑似-活性型)とシス体(疑似-非活性型)を異性化することにより阻害活性を可逆的にON-OFFすることにより、酵素活性を自在に光制御することを目的として研究を開始した。本年度は、Δlac-アセトゲニンのアルキル側鎖部分の形状変化が阻害活性におよぼす影響について検討した。その結果、側鎖部分の幅が広くなると顕著に活性に不利になることがわかった。このことから、側鎖に導入したアゾベンゼンのトランス-シス異性化が活性の変化に結びつく可能性が示唆された。 そこで、側鎖部分にアゾベンゼン構造を導入する合成方法を探索した。側鎖末端にヨウ素やメシル基のような良好な脱離基を導入しておき、別途合成したアゾベンゼンフェノールをウイリアムソン型のエーテル反応で導入することを試みたところ、低収率ではあるものの両側鎖にアゾベンゼン構造を導入することができることがわかった。今後、エーテル化条件を改良し、収率の上昇を図る予定である。 また、bis-THF環部とアゾベンゼン構造との距離が活性に影響を与えることが予想されたので、この間の距離を変化させ活性への影響について検討した。その結果、距離には最適値があることを示唆する結果が得られた。今後、最適値を同定し、できる限り強い活性を発揮するアゾベンゼン誘導体の開発に繋げていく予定である。
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