トウガラシの辛み成分であるカプサイシンは、ヒト大腸癌由来の培養上皮細胞であるCaco-2細胞に作用し、そのタイトジャンクションを一時的に開放する作用を持つ。タイトジャンクションに、細胞間隙からの物質の透過吸収を制御しているため、腸管からの栄養吸収の制御剤としてカプサイシンを利用することが可能である。しかし、このカプサイシンによるタイトジャンクション開放のメカニズムは全くわかっていない。そこで、本研究では、Caco-2細胞に発現しているカプサイシン受容体をタイトジャンクション開放の開始点と考え、その構造機能解析とアッセイ系への活用を目的としている。今年度は、カプサイシン受容体のN末端細胞質領域にターゲットを絞り、その大腸菌による発現系の構築を種々検討した。その結果、可溶化したタンパク質を大量発現することに成功したが、構造解析が可能なデータはまだ得られていない。現在、効率良い精製と構造解析の条件検討を行っている。このN末端細胞質領域には、タンパク質間相互作用に関与するアンキリンリピートドメインが存在しているため、カプサイシン受容体の下流に存在するシグナル伝達タンパク質の同定も可能ではないかと考え、その検討も進めている。一方、昨年度に引き続き、カプサイシン処理→カルシウムの流入→コフィリンの脱リン酸化→タイトジャンクションの開放という分子機構をより詳細に解明すべく、その生化学的解析を行った。
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