研究概要 |
攪拌式または高圧式ホモジナイザーの組合せおよび操作条件を適当に調整することにより,リノール酸メチルを油相として乳化剤などの組成が同一で油滴径のみが数10nmから数μmの範囲で異なるO/WI型エマルションを調製した.このエマルションを40℃の恒温に保持し,リノール酸メチルの未酸化率,酸素の消費量および油滴径の経時変化を測定した.油滴径が小さいほど,酸化の誘導期が短くなったが,自触媒型速度式基づいて算出した速度定数は油滴が微細化すると小さくなった.これらの傾向は,油滴径が100nm以下の領域で顕著であった.油滴の微細化に伴って酸化速度定数が小さく酸化が遅延される現象は,当初の予想と合致し,乳化剤の疎水部が油相に投錨することによりリノール酸メチル(基質)が希釈される効果によると推測される.しかし,誘導期の短縮はこの効果では説明できず,今後解明すべき課題である.リノール酸メチルの酸化過程で消費される酸素の物質量は,酸化の前半ではほぼ1:1の量論関係であったが,酸化の後半では著量の酸素が消費された.この現象はバルク系におけるリノール酸メチルの酸化過程における挙動と同じであり,油滴径には依存しなかった.また,初期油滴径が数10nmの場合には,リノール酸メチルの酸化に伴って,油滴径は大きくは変化しなかった.一方,初期油滴径がサブミクロンからミクロンのときにはリノール酸メチルの酸化に伴い油滴の合一が進行し,油滴径が大きくなった.このように,酸化過程でのエマルションの分散安定性が初期油滴径に依存する現象を見出した.
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