研究概要 |
実験室において,密閉環境下でニオイ選択性センサを用い,シロアリから発生するニオイ成分の検出を試みた.同時にシロアリが木材を摂食する際に発生する微弱な振動(アコースティック・エミッション,AE)の検出も試みた結果,シロアリの摂食活動が活発になることによって,検出されるニオイ成分の濃度も上昇し,摂食活動とニオイ成分との関係を確認することができた. また,水素,メタンの定性,定量分析に優れた簡易ガスクロマトグラフを用い,シロアリの頭数や温度、種類などの条件を変えて,シロアリから発生する水素およびメタンの検出実験を行った.その結果,水素・メタン濃度ともにほぼシロアリの頭数に比例して上昇した.また温度変化によっても水素・メタン濃度は変化することも確認され,シロアリの活動する環境条件によって,検出されるガスの濃度は密接に関係していることがわかった.さらに,シロアリの種類によって,発生する水素・メタン濃度には差が認められ,特に土壌と接触する機会のないアメリカカンザイシロアリ(乾燥した木材中に生息する)では,メタンが検出されないことがわかった. シロアリに特有な微量ガス成分の同定とそれを利用したセンサに関する基礎的データの収集のため,より微量でかつ特異的な代謝ガスの検出を目的としたSPME法(solid phase microextraction)を用い,ガスクロマトグラフィー装置でシロアリから発生するガスの分析を試みた.極性の異なる4種類のSPMEファイバを用いて,シロアリ由来のガスを検出するのに有効なSPMEとGCカラムの組み合わせを検討した結果,無極性カラムと中極性SPMEファイバの組み合わせを用いることで,はっきりとしたガスクロマトグラムのピークが得られることがわかった.この組み合わせを利用して,シロアリに特徴的なガス成分の同定を行っていく予定である.
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