エビ類の養殖は、white spot syndrome virus(WSSV)などのワイルス感染症により甚大な被害を受けている。積極的なWSSV対策としてワクチンの開発が上げられるが、無脊椎動物であるエビ類は抗体を持たず、ワクチン開発は困難とされてきた。しかし、これまでの研究で、WSSV感染耐過エビがWSSVの再感染に対し抵抗性を獲得すること、またWSSV構造タンパク質を筋肉内接種することでWSSVに対する抵抗性が誘導されることを明らかにした。本研究では、WSSVの構造タンパク質であるVP26およびVP28を用いた経口ワクチンの開発(調整法、投与方法ならびにウイルス攻撃法)を行い、以下の成果を得た。 1. 大腸菌で発現させたWSSVの遺伝子組換えタンパク質(rVP26およびrVP28)をクルマエビに経口投与し、経口、浸漬および注射の3法でWSSVよる攻撃を行い、経口投与ワクチンの効果について検討したところ、何れの攻撃法においても経口投与区の死亡率が対照区に比べ有意に低かったことから、rVPsの経口投与によりWSSVに対するクルマエビ防御効果が誘導されることを明らかにした。 2. rVP26あるいはrVP28を経口投与したクルマエビの感染防御能の持続期間および特異性について検討したところ、感染防御効果は、投与45-55日後にピークとなったが、その後減少し106日後には消失した。また、追加投与により感染防御能が維持・回復することを明らかにした。さらに、誘導されたクルマエビのWSSVに対する感染防御能には、ある程度の特異性があることを明らかにした。 以上、本研究の成果は、クルマエビの養殖過程において、WSSVrVPsを経口投与することでWSSV感染症の予防が可能であることを明らかにした。本成果により、養殖クルマエビにおける本病被害は大幅に軽減されると考える。
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