研究概要 |
ワカレオタマボヤ(Oikopleura dioica)の飼育規模を、18年度の3リットル小型水槽から30リットル水槽に拡大し、第2世代において安定的に約10,000個体/30Lを生産する技術を開発した。水温15℃〜20℃の条件下でワカレオタマボヤの生残率に差は見られなかったが、塩分には明瞭な影響が認められ、実験を行った25〜34368の条件下では、34368において最も生残率が高かった。 平均粗脂肪酸含量は、培養ワカレオタマボヤ14.6、天然尾虫類11.2、栄養強化ワムシ15.5、栄養強化アルテミア20.7(%,d.b.)であった(d.b.は乾燥重量ベース、尾虫類ではハウスを除いた本体部分のみに換算した数値を示す)。また、相模湾で採集した天然尾虫類には数種が混在したが、そのほとんどはOikopleura longicaudaであった。脂肪酸のうち、E3A、DHA、Σn-3H8FA(高度不飽和脂肪酸合計)含量は、ワカレオタマボヤ1.48、1.28、4.12、天然尾虫類1.92、1.35、3.32、栄養強化ワムシ0.3、2.26、2.87、栄養強化アルテミア0.63、0,57、1.26(g/100g、d.b.)であった。尾虫類のDHA含量は栄養強化ワムシに劣るものの、E3AおよびΣn-3H8FA含量は従来の仔稚魚飼育用餌料生物よりも高い値であった。培養したワカレオタマボヤとOikopleura longicaudaを主体とする天然尾虫類の間で、E3A、DHA、高度不飽和脂肪酸合計含量が比較的近い値であったことから、高い不飽和脂肪酸含量は尾虫類に一般的な特性と考えられる。E3AとDHAは、生残、成長だけでなく仔稚魚期の脳の発達においても重要な役割を果たすことから、これらを豊富に含む尾虫類は仔魚の餌料として優れており、海産仔魚の初期餌料としての高い可能性が期待される。
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