研究概要 |
天然海域より生きた状態で採集した尾虫類Oikopleura dioicaを用いて予備飼育し、そこから30L水槽へ移して中規模の大量培養を試みた。餌料として天然海水を10μmメッシュで濾過し、その中に含まれる植物プランクトンを給餌した。この手法により、第2世代でほぼ安定して10,000個体を生産できることを確認した。さらに、水槽規模を100Lに拡大し同様の結果を得ることができた。天然採集したOikopleura longicauda、および比較対象としてシオミズツボワムシ、アルテミアのタンパク質構成アミノ酸組成を分析した。各アミノ酸とも3種の餌料生物間で大きな差は見られなかった。遊離アミノ酸については、タウリン含量に注目すると、アルテミアが431±6.46(mg/100g, d.b.)で最も高く、次いでO. longicauda 368±49、シオミズツボワムシ88.4±2.57であり、尾虫類において高いという結果は得られなかった。しかし、総遊離アミノ酸含量ではO. longicauda 7096±646(mg/100g, d.b.)、シオミズツボワムシ3894±122、アルテミア2903±24.8となり、O. longicaudaが他に比べてかなり高い値を示した。仔魚は初期にはタンパク質などの高次構造を持つ物質を効率よく消化吸収できないことから、消化しやすい遊離アミノ酸を多く含む尾虫類は海産仔魚の餌料として有効であることが示唆された。ヒラメ仔魚への尾虫類給餌試験については、昨年度の予備実験ではうまく摂餌させられなかった。平成21年4月から再度飼育実験を試みているところである。
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