多核単細胞緑藻に特有の細胞内容物からの細胞再構築現象の分子機構を解明することを最終目的とし、本研究課題では、ハネモ属緑藻を用いて同現象に鍵化合物として機能する藻体内の2種レクチンの会合体形成機構を明らかにすることを目的とした。 まず海産緑藻オオハネモから2種類の異なるレクチン、GalNAc/Gal特異的レクチン(BML-54)とMan特異的レクチン(BML-17)を新たに単離・精製した。両精製レクチン間の相互作用を表面プラズモン共鳴法を用いて解析し、両レクチン間に親和定数10^4M^<-1>の相互作用があることを認めた。次に、BML-54、BML-17および両レクチン混合物について、各加熱処理物とともに、すでに確立した再混合実験系に供し、細胞内容物からのオルガネラ凝集能およびプロトプラスト形成(膜形成)能を精査した。その結果、非加熱下のBML-54およびBML-17はオルガネラ凝集能を示さないが、加熱処理後のBML-54とBML-17はオルガネラ凝集能とプロトプラスト形成能を示すこと、加熱処理により各レクチンの高分子会合体が形成されることを再確認した。一方、両レクチンの混合物に関しては、非加熱下でもオルガネラ凝集能を示したが、プロトプラスト形成能は示さなかった。混合物の加熱処理後のものはプロトプラスト形成能を有していた。抗レクチン抗体を用いるウェスタンブロットから、加熱処理後のものは高分子会合体を形成していたが、非加熱処理のものでは高分子会合体の形成が認められなかった。 以上の実験結果から、BML-54とBML-17は互いに相互作用することによりオルガネラ凝集能を獲得するが、プロトプラスト形成能を獲得するためには、高分子会合体の形成が必須であることが示唆された。プロトプラスト形成能をもつ高分子会合体の形成機構の解明は今後の課題として残された。
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