目的: 農業技術は広く公開すべきという考えから、排他的権利の設定には積極的ではなく、権利としての知的財産権の意識が希薄であった。しかし、国内外における大競争時代にあっては、知的財産権の取得、活用は競争に勝ち抜くための有力な手段となりえる。そこで、我が国、あるいは自治体は、バイオテクノロジーなど先端技術を活用した新品種、新技術の開発と知的財産権取得を促進するとともに、農家の知的財産権取得に向けた支援体制を構築し、知的財産の蓄積を進める必要がある。本研究では、過去30年間の各都道府県における農業分野の知的財産権の出願動向、農業統計、農業政策、ブランド化戦略等を調査し、知的財産権の活用による農業活性化政策を検討することを最終目的とする。 方法: 平成18年度は、商標、種苗に関する調査を中心に行った。商標調査については、データベースとしてPATOLIS-IVを、種苗調査については農林水産省品種登録情報を活用した。 結果: 商標については、企業による出願の割合が高かったが、個人出願の割合が全体の2割以上ある比較的高い地域も見られた。種苗については、個人による出願の割合が比較的高く、なかには50%以上が個人で行っている地域もあった。一般的に、知的財産権を個人で管理することは困難である。権利侵害の監視や訴訟の準備などは高度な専門知識が必要であり、専門業者へ依頼するにも高いコストを支払わなければならないからである。したがって、個人の知的財産権を十分に保護するためには行政や農協による支援が必要になると考えられる。各機関が農産物のブランド化を支援し、農業の活性化にいたるには知的財産戦略のコンパスなくしては不可能であろう。現在、各都道府県において知的財産戦略が整備されつつあるが、農業分野(一次産業)を含めた戦略を立てているところは少ない。今後検討していくべき課題であると考えられる。
|